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唯「ドラクエ!」 第一話

第一章 ~運命の足音~


-- ある朝 --

唯「スースー・・・」

 コンコン

憂「お姉ちゃ~ん、起きてる~?」

唯「スースー・・・」

憂「お姉ちゃん、遅刻するよ~?」

唯「むにゃむにゃ・・・憂・・・そっちにいったらぁ、危ないよぉぅ・・・スースー」

憂(お姉ちゃん寝言言ってる・・・かわいいなぁー)

憂「お姉ちゃん、そろそろ起きないとー」グイグイ

憂「お姉ちゃん?」

 半分諦めがちに姉を起こしていたのだが、様子がおかしい事に気づいた。
 眉間に皺を寄せて、息苦しい仕草をしているのだ。

唯「ぅぅ・・・」

憂「お姉ちゃん?大丈夫?」

唯「うぅ、ぅぃぅぃ、ぅい!!」ガバッ

 突然起き上がり、両手を前に突き出して何かを掴むように手を握る。

憂「うわっ、びっくりしたー・・・お姉ちゃん?」

 唯の目からは涙がこぼれていた。

唯「あれ??憂?ういぃぃぃ、ひっぐ、ひっぐ、ひっぐ」ダキッ

 憂に抱きついた唯はひどく震えている。

憂「お、お姉ちゃん、悪い夢でも見たの?」ポンポン

 優しく背中をさすり、宥める憂。

唯「ひっぐ、憂が、一人で行っちゃうから、ひっぐ・・・ って、ほぇ?」

 辺りを不思議そうに眺めて、ハッと気づく。

唯「ゆ、ゆめかぁ~~、ふぅ~」パタッ

憂「お姉ちゃん朝だよ、遅刻するよ、ってあれ?何を持ってるの?」

唯「え? あれ? なんのCDかなこれ?」

 唯の手には中身のあるCDケースが握られていた。
 それを覗き込む憂。なにやらラベルが貼られている。

憂「ドラゴンクエスト ゼロ?ドラゴンクエストって、あの有名なRPGのゲームのことだよね」

唯「これは憂のなのかな? 私は持ってないからなぁ」

 全く身に覚えが無く、不審に思う唯。

憂「ううん、私のでもないよお姉ちゃん、お姉ちゃんが知らないなら、どうして手にもってるんだろうね?」

唯「うーーーん・・・あ、憂!」

憂「なに?お姉ちゃん?」

唯「お腹しゅいたー」グー

憂「うんうん、朝ごはんはもう出来てるから、早く着替えて学校いかなくちゃねっ」

唯「あいさ!」シュタ

 なんとなく鞄にCDケースを入れ込み、猛烈な速さで着替える唯。


-- 朝ごはん --

唯「おほー、ウィンナー♪ウィンナー♪しかもタコさん~♪」

憂「かわいいでしょ~」

唯「目まで付いてる~、さすが我が妹、こってらっしゃいますなぁ~」

 いつも通り感心する。
 とても自分には出来ない芸当をやってのける憂は自慢の妹だ。

憂「さぁさぁ、お姉ちゃん、早く食べないと遅刻しちゃうよ~」

唯「そだねっ、タコさんいただきますっ」パク

憂「お姉ちゃんは今日も学園祭の準備で帰り遅いの?」

唯「そうだよー、劇の準備とライブの準備で忙しいんだぁ」モグモグ

憂「そっかぁ、大変そうだねぇ」

唯「ううん、遅くまで皆と一緒に居るのはすごくたのしいよー」モグモグ

憂「フフ、でもあまり無理はしないようにね」

唯「うん、倒れたりしたらもっと大変だもんねっ」モグモグ

 以前、ライブの直前に風邪を引いてしまい、軽音部の皆に迷惑をかけてしまったことを思い出した。

憂「お姉ちゃんは夢中になると周りが見えなくなるから、心配だよぉ」

唯「あははー、気をつけるよ~」モグモグ

憂「私も出来るだけ応援するからね、あっ、今度お弁当の差し入れ持って行ってあげるね」

唯「ほんとに~?ありがとう~、遅くなるとお腹がグー太なんだよぉ~、エヘヘー」モグモグゴクン

憂「フフ、あっ お姉ちゃんもうこんな時間」

唯「おっとっ、憂そろそろいこっか」

憂「うんっ」

 ガチャ

 季節は秋、ドアを開けるとひんやりとした冷たい朝の匂い。


-- 放課後 --

 キーンコーンカーンコーン

唯「はわわ~、今日掃除当番だった~」ガックシ

和「やっぱりね、いつも通り忘れていると思ったから、聞いてみてよかったわ」

唯「和ちゃんありがと~、でもいつも通りって何気にひどくないっ!?」ガーン

和「フフ、それよりライブの準備の方は順調なの?最近劇の方ばかりやってたみたいだけど」
(木の役をあんなに懸命に練習しても、どうにもならない気がするのだけど)

唯「そうなんだよね~、だから今日はライブの練習しよう!ってなったんだ~」

和「そうね、唯たちのライブ楽しみにしてる子、結構多いみたいよ、頑張ってね」

唯「おぉ~~、どんとまかしておくんなまし!絶対楽しいライブにするから!」

和「期待してるわよ、それじゃあ掃除も頑張ってね、私は生徒会にいってくるわ」

唯「うんっ、いってらっしゃ~い、お掃除お掃除~♪」


-- 軽音部 部室 --

 ガチャ

 部室のドアが開かれ、いつもの二人の姿が見えた。

律「ちーーっすっ!!」

梓「あ、律先輩に澪先輩」

 律と澪が部室に入ると、そこにはギターを抱えた梓が立っていた。

澪「梓、先に練習してたんだな」

梓「はいっ、なかなか皆さんと練習できませんでしたので・・・」

律「梓ったらぁ!寂しがり屋さんでちゅねぇ!」

梓「ち、違います!学園祭も近いのに、皆さんと練習が出来なくて焦ってるだけですっ!」

律「素直じゃないんだからうちの子は~」

梓「んもう!今日はみっちり練習ですからね!」

澪「うん、そうだな。あまり時間が取れない分、しっかり練習しないとな」

律「そうだなー、しかし小腹がすいたなぁ・・・ってムギはまだか・・・」

梓「律先輩、今お菓子のこと考えましたね?今日は先に練習ですから!」

律「なぬー!?腹が減ってはドラムが出来ぬぞー!」

澪「ダメだダメだ、今日のお茶は練習の後だ!」

律「えぇーー、うん、まぁ、しょうがないっか」

梓「あれ、意外と素直ですね」

律「さすがに練習してないのは、あたしもまずいかなーって思ってるからさ」

澪「じゃあ唯とムギがくるまで練習しておこうか」

梓「はい、練習しましょう!」

 ガチャ

 また部室のドアが開かれた、今しがた律が熱望した人物だ。

紬「遅れちゃった~」

律「おっそいぞーっと、ムギ当番だったか?」

紬「ううん、ちょっと教室に忘れ物しちゃって・・・じゃじゃーん!!」

 手に持って見せているCDケースには『19XX年 学園祭ライブ』とラベルが貼られている。

梓「それって!もしかして前の学園際ライブの映像ですか!?」

紬「うんうん、朝にさわ子先生に渡されてね、参考に出来ないかしらって」

澪「おぉー、きっと良い参考になるに違いないな」

律「もしかしてさわちゃん時代のやつかー!?」ワクワク

紬「どうかしら~、皆が集まったら見ましょ、じゃあ私はお茶の準備をするわねぇ♪」

梓「あ ――――!」

 梓が言う前に、澪が言葉を切った。

澪「まぁまぁ、先に学園際ライブの映像を見ながらお茶でもいいかもよ、そっちの方がやる気が出ると思うし」ボソボソ

梓「うぅ・・・仕方ないですね・・・」プー
 (澪先輩さっきと話がちがーう)

 どうにも腑に落ちない様子で頷く梓。

律「む~ぎちゃんっ、今日のお菓子はなにっかなーっ??」

紬「今日はモンブランケーキを持ってきたのよ~♪斎藤イチオシなのぉ」 b ビシッ

律「ウッハー!うまそー!」ジュルリ

梓「律先輩、よだれが床までいっちゃってますよ」

律「いや~、今日寝坊しちゃって、ろくな弁当つくれなくてさぁ」グー

澪「ふーん、遅くまで何をしてたんだ?」

律「えっ・・・それはっ・・・あはっ.....///」

澪「きもわるいっ」ゴスッ

 澪の手厳しいツッコミが入る。

律「いっつ~・・・久しぶりにライブのDVDみてたらテンションあがちゃって」テヘッ

梓「それで寝坊ですか・・・わかる気がします、私もついつい見入っちゃって、気づいたらソファで寝てたり・・・」

律「そうそう!音楽聴きながら寝るのってきもちーよなー!」

梓「はいですっ!律先輩、気が合いますね~」

紬「うらやましいわ~・・・うちはそうゆうのが厳しくて」

澪「夜更かしは肌にも悪いし」

律「澪ちゃんはデリケートでちゅねぇー」ツンツン

澪「ふんっ、いつか律の肌がボロボロになった時には、ぎゃふんと言ってやるからなっ」

 ガチャ

 またまた部室のドアが開かれ、これで軽音部メンバーが揃った。

唯「あららー、皆さんお揃いで~」

紬「唯ちゃん、お掃除お疲れ様~」

梓「唯先輩、お疲れ様ですっ」

唯「あぁぁ、あずにゃ~んっ」ダキッ

 梓を見るや否や一気に駆け出し抱きつく唯。

梓「またですかっ、ちょ、くっつきすぎですっ」グイグイ

 拒否る動作を見せはするが、満更でもなかった。

唯「あずにゃ~ん、今日はなんだか甘い匂いがするよぉ~」クンクン

梓「そ、それはムギ先輩のケーキですっ」 グイグイ

紬「お茶の準備できたわよ~♪」

 机にはお茶とモンブランケーキが用意されている。

唯「おほー!タイミングばっちしにゃん!」 ジュルリ

律「現金なやっちゃのぉ!」

紬「さぁさぁ、座って座って♪」

律「よし、時間短縮のためにDVD見ながらお茶にしよう!」 b ビシッ

唯「DVD?・・・ってあれのこと?どしてりっちゃん知ってるの?」ゴソゴソ

 おもむろに鞄を探る唯。

律「ん?」

唯「じゃじゃーん!ドラゴンクエスト ゼロ!」

 唯の手には朝方手に入った素性不明のCDケースがあった。

律澪紬梓「ぇ?」

唯「ぇ?」

澪「って、唯、それは、ぇ?」

唯「うーん・・・わかんない」テヘ

律「なんでやねんっ!あたしが言ったDVDは、前にこの学校でやってた学園祭ライブのDVDなんだよ」

梓「そうですっ!それにドラゴンクエストって言えば、あの某RPGのゲームじゃないですか、
  今日は練習に関係ないことは一切受け付けないですっ!」

唯「うへぇー、あずにゃん手厳しいのぉ」ソロソロ

 忍び足でPS3が在る方に歩む唯。

梓「って唯先輩っ、言いながらDVDセットしないでくださいよっ!」

 以前部室でお泊り会があった時に持ってきていた、PS3にDVDをセットしようとしていた。
 ここにあるTVはもちろん紬家提供のBIGサイズである。

律「そいやこの前もってきたPS3がそのまま置きっぱだったのか、聡が騒いでたの忘れてた・・・」

梓「唯せんぱーいっ!絶対にやらせませんよ~~!」グイグイ

 唯のDVDセットを阻止しようと体を張って阻む梓。

唯「あずにゃっ、しつこーい、うぬぬぬ」グイグイ

 縺れ合いながらも、お互いに譲らない。

紬「げーむげーむ~~♪」グイグイ

 更に紬が加わる。

澪(いつの間にムギまで)

梓「み、澪先輩、加勢してください~、今日は、練習を~!」グイグイ

澪「お、おぉ、唯、ムギ、今日はさすがにライブの練習しないと、ととと」グイグイ

 澪が加わり、4人はDVDを巡って縺れ合った。

唯「みおちゃ!力つよぃっ、むむむうう」グイグイ

梓「唯先輩こそ、なんでこんな時だけ!」グイグイ

紬(ドラゴンクエストって何かしら~♪)グイグイ

澪「なんでムギもなんだよぉおおお」グイグイ

律「・・・」

唯澪紬梓「ぅぉぉおおおぉぉおおお」グイグイグイグイ

律「・・・」ヒョイ

 横から手を伸ばし、DVDをかすめ取る律。

唯澪紬梓「!?」

律「見るだけ見てみよっぜ」シャー(PS3に入れる音)

 淡々とケースを開き、PS3にDVDをセット。

梓「あー!律先輩っ!抜け駆けです!反則です!」

唯「りっちゃん!おとり作戦大成功だね!」b グッ

梓「謀りましたね!卑怯千万!」

律「謀ってないって、お茶の時間だけだよ、それが終わったらみっちり練習するからさっ」

梓「ムー」プー

紬「あっ、始まったみたーい」ワクワク

 TVを片目に、椅子に着く一同。

 ♪パーン パパパパッパッパーン   パーン パパパパッパッパーン 
 ♪パーン パパパーン パパパーン パパパーン パパパーン パパパパッパッパーン …


律「ん?映像が出ないなぁ」バシバシ

澪「線の接触じゃないか?黄色、白、どっちだったか」

律「でも音はしっかり出てるし・・・ぉ?」

 PS3の様子を見ていた律だが、突如体が横にひっぱられた。
 自分だけかと思ったが違うようだ。
 その途端、大きな衝撃が一同を襲った。

 グラッグラグラグラ!!

 部室が、大きく揺れたのだ。

梓「地震です!?」

唯「キャーー!」ササッ(机の下に隠れる)

紬「みんな!机の下に!」

律「いや、ちょっとまて、揺れてない、揺れてないぞ!」

 揺れは既に止まっていた。

澪「でも、何だろう今の揺れのような感覚は・・・」

梓「え!?そ、外が真っ暗ですっ!」

律「な・・・なんじゃこりゃぁああ!?」

 夜の暗さとは違う、それは漆黒といえば理解できるだろうか。
 宇宙、もしかすると宇宙はこんな感じなのではと梓は感じた。

紬「疲れてるのかしら・・・」スッ

 突然の不可思議な出来事に、紬の顔は青ざめていた。
 ゆっくり椅子に座り、項垂れてしまう。

唯「ほぇ?地震じゃないの?」ヨイショ

澪「り、律・・・なんだろこれ・・・夜になっちゃったのか?」

律「あたしが分かるわけないだろ・・・夜とは違うよな、明らかに」

唯「えー?お外真っ暗だねー?もう夜かー」

梓「だから夜とは違いますよ!と言っても、なんなんですかこれは…」

 外を眺めながら、それぞれが思考していると、
 またもや教室が揺れた。

 グラッグラグラグラ!!

 先ほどの揺れとは比較にならない程、大きな揺れ。

唯律澪紬梓「キャーー!」

 困惑する一行を次に襲ったのは、耐え切れないほどの物理的な衝撃であった。

 ドーーーンッ!!

 一同は気を失ってしまった。

theme : けいおん!!
genre : アニメ・コミック

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第一話スタートはコチラから
唯「ドラクエ!」第一話

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