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唯「ドラクエ!」 第二十話

 一件の後、傷ついて倒れた澪を背負い、
 一同はいつもの宿屋へ戻っていた。

-- 夜 旅人の宿屋 律澪紬の寝室 --

律「澪、体調はどうだ?」

澪「律、、ありがとうな、、ここまで運んでくれて」

 澪はあれから暫く気を失っていた。
 宿屋に着いた後もしばらく意識が無く、
 ようやくつい先ほど、唸るように目を覚ましたのだ。

 そんな澪を、律はずっと背負って宿屋まで連れて来てくれたのだ。

律「あったりまえだろ・・・心配したよ」グス

 項垂れて、涙を拭う律。

澪「ごめんな、、、心配させちゃって、、」

律「いいんだよ、心配なんていくらでもするから」

律「だから・・・あんな無茶はするなよ・・・」グス

 頬がピンク色に染まり、
 こんなにも澪を心配する自分が少し照れくさかった。

澪「フフ、律だって、、、無茶苦茶だったぞ」

律「フフ、まったく、似たもの同士だよ、ほんと・・・」

澪「プププ」

律「ハハハ」

 ガチャ

紬「なになに?楽しそうねぇ」

 手に持ったおぼんには、湯気の立つお茶があった。

澪「あ、ムギ」

 澪は笑顔を紬に見せて、少し間を置いて言った。

澪「ありがとう」

紬「ん?」

澪「ムギと唯のホイミが無かったら――」

 しかし澪の言葉をさえぎり、紬が言葉を発した。

紬「ううん!違うわ、澪ちゃんのお陰よ?」

澪「え?」

紬「あの時、澪ちゃんが守ってくれたから」

紬「皆が無事でいられたの・・・ありがとう澪ちゃんっ」グス

 感謝の気持ちが極まり、紬の頬を涙がつたった。

澪「ムギ・・・ありがとう」

紬「でも・・・でも・・・無茶しないで」

 あの時の澪の悲惨な姿が脳裏に浮かんでしまい、
 紬の目に涙が溢れた。

澪「ごめん・・・」

 皆に心配かけたんだなと、澪は申し訳なさで項垂れる。

律「なーに言ってんだよ!!」

 項垂れた頭を上げて、二人は律を見やった。

紬「りっちゃん・・・」

澪「律・・・」

律「澪もムギも!」

律「唯も梓も!そんでトンちゃんもだ!」

 もう暗い顔はしない。
 トンちゃんの分も、明るく、強く生きる。
 律はそう決めていた。

律「皆が皆を守った!ただそれだけのことだぜ!?」

澪「律・・・うん、そうだな」

紬「そうだわ・・・皆がお互いのためを思って頑張った」

律「そう、それが、命掛けたトンちゃんからの贈り物だった気がするんだ」

 トンちゃんはもういない。
 けど、今も一緒に居るような、そんな不思議な感じがしていた。


-- 唯梓の寝室 --

 唯のベッドで二人は寄り添い合って寝ていた。
 珍しく、梓が唯のベッドに潜り込んでいたのだ。

梓「先輩」

唯「な~に?」

梓「唯先輩が言ってた事、ホントでしたね」

唯「えっ?なんだっけ?」

梓「トンちゃんが生きてる気がするって」

 少し考えて思い出す唯。

唯「あ~、そう、そうなんだよ!」

唯「どう!?見直したでしょ!?」キリ

梓「フフ、どうせまぐれだと思いますけど~」

唯「えぇ~、わたしのシックスセンスは本物だよぉ」

梓「でも、良かったです、トンちゃんに会えて」

唯「・・・」

 気まずそうに、布団に顔を隠す唯。

梓「ん?先輩?」

唯「・・・」

唯「あずにゃん、ごめんね・・・」

梓「唯先輩・・・」

唯「わたしが・・・不甲斐ないばかりに・・・」グス

 トンちゃんに剣を刺したのは唯だった。
 決して本意では無かったにしろ、その責任はどこに捨てる事も出来ず、
 ふと思い出す度に申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。

梓「唯先輩のせいじゃないですよ」

 しかし、梓の気持ちの整理はとうについていた。

梓「むしろ、唯先輩のおかげです」

唯「ほぇ?」

 目から上だけ布団から出し、梓を見つめる唯。
 その目は涙で腫れていた。

梓「唯先輩の心が強かったから、トンちゃんを救えたんじゃないですか」

 あの時の光景を思い出し、梓は胸が締め付けられた。
 しかしあれは、トンちゃんを救う唯一の方法だったのだと後で分かった。

梓「わたしには・・・出来ない事でした・・・」

唯「あずにゃん・・・」

梓「だから、だから言わせてください!」

 梓は唯の顔を布団から完全にひっぱり出し、顔をじっと見つめた。

梓「トンちゃんを助けてくれて、ありがとうございました!」

唯「・・・」

唯「トンちゃんは・・・」

 梓を見つめ返す唯。

梓「はい」

唯「トンちゃんはね、自分で選んだんだ」

唯「あのまま、自分じゃなくなるのは嫌だから、だから」

梓「・・・」

唯「だから、トンちゃんは、立派に自分の運命を歩んだの」

 だから、泣かない、もう泣かない。
 トンちゃんは立派だったんだから。

梓「はいっ、わたしもトンちゃんを尊敬します!」

唯「あずにゃん」ダキッ

 ギュ

梓「唯先輩」

 ギュ

 共に抱きしめ合った。
 お互いの顔を肩越しに、涙を隠しながら抱き合った。


-- 翌日の朝 --

 一同は朝食を取るためリビングのテーブルについていた。
 いつも紬が早起きをして用意してくれているのだ。

唯「うんまっ~~♪」

 今朝の朝食は奮発されていた。
 昨日の出来事を考慮して、紬が買ってきていたのだ。
 何を買ったかというと、それはデザートだった。

紬「フフ、今日のデザードは『キングプリン』って言うのよ♪」

 どんぶり大のプリンの上には、食せる王冠がデコレーションされていた。

澪「これ・・・食べたら絶対太るぞ!」

律「お?じゃあいただき~」

澪「食べないとは言ってないだろ!」

梓「でも、食べたら・・・」

 お腹を気にする梓。

律「だからあたしが~」

梓「食べないとは言ってないです!」

律「んにゃろめ!ならとっとと食えっつんだよっ!」ガツガツ

唯「し・あ・わ・せ♪」パクッ

紬(良かった、みんなの笑顔は変わらずね、フフ)

澪「それはそうと、律、今日はどうするんだ?」パクッ

澪(う・・・うまい!甘さ控え目で、そしてなんといっても)

梓(この弾力性!プリンのくせにあなどれないです・・・)

律「うん、そだな、っておい、聞いてないだろ!」

 澪と梓はプリンに夢中になっていた。

澪「あ、すまんすまん、あまりにおいしくて」

律「そっちが聞いといてそれはないだろう~」

梓「プリンがいけないと思います」

唯「おいしすぎるよね~♪りっちゃん半分ちょうだい」

律「お前は食いすぎだろ!やらんし!」

紬「唯ちゃん、実はおかわりあるわよ♪」
(この笑顔、絶やすべからず)

唯「ホントに!?ムギちゃん天使様だよ~~♪」

律「うんんん!!」ゴホン

 咳払いする律。

律「今日は休み、明日からはまた特訓するぞー」

梓「また特訓ですか」

律「もうこの町にモンスター討伐の依頼は無いからな」

紬「じゃあ、私達はまた図書館でお勉強ね」

唯「えぇ~、またお勉強か~」シュン

紬「唯ちゃん、あ~~ん」

 プリンの冠をスプーンに乗せて唯の口に運ぶ。

唯「あむ」パクッ

唯「ううん、ここはちょっとしゅっぱくて、うんまぁ~♪」パァ

紬「お勉強がんばろうね!」

唯「うんっ、頑張るよ~~♪」

梓(さすがムギ先輩ですね)

澪「それじゃあ今日は、明日の特訓方法でも考えながら、ゆっくり休むかな」

律「そだな、梓もあたしらと特訓プランの考察するからな~」

梓「えぁ・・・」
(唯先輩と一緒に居たいのにぃ)

律「隊長命令だ!」ギロ

梓「うぅ、了解です」

律「ということだか――」

 律が説明を終えようとしたその時、
 唯は止まらぬ速さで事を成した。

唯「りっちゃん隙あり!」パクッ

 律のプリンの王冠が、唯の口に吸い込まれてしまったのだ。

律「な!?てめー!返せこのやろー!!」グイ

 唯のほっぺを横に伸ばし、吸い込まれた王冠を取り戻そうとする律。

唯「りっひゃんはふきをみへるからあ~」

律「なんで食っちゃうんだよー!?すっげーショックだしー!!」グス

澪「アハハハ!!」

 律の悔しがる姿を見てツボにはいってしまう澪。

紬(これは梓ちゃんと一緒に居られなくなった唯ちゃんのささやかな報復かしら!?)ドキドキ

律「唯のアホー!今度絶対いちご盗ってやるからな!!」

唯「エヘヘー、ごめんごめん、あまりに王冠がおいしくて」テヘ

澪「アハハハハ!!」

律「澪は笑いすぎだろ!チキショー!!」

梓「ププ、律先輩だけ王冠食べてないですよ」

律「があああああああ、もう買ってくる!」グスン


 こうして、再び一同は笑顔と元気を取り戻した。

 次なる目的は、打倒ライラック。
 そのためにやるべき事はたくさんあった。

 唯と紬は図書館へ行き呪文の習得と修練を。
 律と澪と梓は、自分達で考えた特訓プランを試し、鍛錬を重ねた。

 そして数日が経った。

theme : けいおん!!
genre : アニメ・コミック

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唯「ドラクエ!」第一話

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