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唯「ドラクエ!」 第二十二話

 -- 夜 旅人の宿屋102号室 --

 カチャン

 こんな夜遅くにグラスの擦れる音がするのはここだけだろうか。
 リビングの席に着き、全員がにやけていた。

紬「かんぱ~~い♪」

唯「ケーキうんまっ~~♪」

律「いきなりケーキ食ってんのかよ!」

唯「はいりっちゃん、あーん」

律「あ、あむっ・・・うんまっ~♪」

梓「ぁ・・・」

 梓は手をもじもじさせながら、唯に目配せをしていた。

唯「はい、あずにゃんもあーん」

梓「ぁ、あむっ・・・うんまっ~♪」

唯「えへへー、おいしいねあずにゃん」

梓「はいですっ♪」

澪「今日のMVPは唯と紬だったな」

紬「え、そ、そうかしらぁ.....///」テレテレ

律「ムギの一言が決めてだったからなー」モグモグ

律「それと唯も、なかなかイケてたぜ」b グッ

唯「でへへ、緊張したよぉ」テレテレ

紬「唯ちゃん、ほんとにエリちゃんのことを想ってるのね」

唯「そうりゃあそうだよ~、エリちゃんは大切な友達だからね!」フンス

律「梓やばいんじゃねぇのぉ?」ニヤ

 梓が顔を強張らせているのを律は見逃さなかった。

梓「え!?な、どうしてですか!か、関係ないですしっ」ポロ

 ガッシャーン

 梓の持っていたグラスが豪快に地に着き破裂した。

紬「あらあら」ヨイショ

梓「あ、す、すみません先輩」

紬「いいのいいの、梓ちゃんは座ってて」

律「いや、すまん・・・あんなに動揺するとは」

澪「まったく、律はデリカシーがなさすぎる」

唯「そうだよー、それにわたしはあずにゃん一筋なんだから」b グッ

紬(そうこなくっちゃー!)

梓「あ・・・は、はいです.....///」カァ

律「え・・・」
(なんだ?うまく収まった?)

律「・・・」

律「ヒューヒュー!!やるな二人共!!もうできちゃ――」

 ゴチン

澪「ほんっっと懲りないな!もう」

律「いっちいいいいいい」ヒリヒリ

紬「あらあら」
(もうちょっと見たかったのにいいい)


-- 数時間後 唯梓の寝室 --

 胃袋の限界を超えた食事を済ませ、
 それぞれ寝室で横になっていた。

梓「せーんぱい、何読んでるんですか?」

唯「呪文書だよ~、次の呪文を早く覚えたいんだよぉ」

梓「・・・」

 梓はじっと唯を見つめて、ゆっくりと言葉を切り出した。

梓「え、エリちゃんのためですか?」

 少し沈黙が走った。

唯「うーん、皆のためだよぉ」ゴロゴロ

 ベッドの上でゴロゴロと転がりながら本を読む唯を見て、
 梓は更に焦りを感じてしまう。

梓(わたし、何言ってんだろ・・・)

梓「そうですよね、偉いです先輩、尊敬しますっ」

唯「うぇ?そ、そう?エヘヘー」

唯「あずにゃんだってさ、りっちゃん達と鍛錬頑張ってるから大変そうだよね」

梓「そりゃあ大変ですよぉ、澪先輩も律先輩も強くて」

唯「だよねぇ~、りっちゃんも澪ちゃんも、いつの間にかあんなに強くなっちゃってさ」シミジミ

唯「でも、あずにゃんも強くなったじゃんっ?」

梓「わたしも、ですか?」

唯「うん、すっごいジャンプしたり!斬ったり!投げたり!」

 手や足をばたつかせ、戦っている時の様子をジェスチャーする唯。
 その姿が微笑ましく、梓はついにやけてしまう。

唯「マナのお陰だって分かってるけど、なんかすごくて拍子抜けしちゃうよ~」

 地球に居た頃は絶対に出来ない運動レベル。
 全てはマナを得てレベルアップしているからだった。

梓「そうですよね、わたしも自分の動きに驚く時もあります」

 唯の言うとおり、マナのお陰だと言うことは理解している、とはいえ、
 今までの生活と比べるとあまりに現実味が無く、時々自分が信じられないのであった。

唯「でも、こっちの人達はそれが普通なんだよねぇ」

梓「そうですね・・・わたし達の常識は通じないですね」

唯「しかしさ、あずにゃんよ」

梓「はい?」

唯「こっちの人達も、わたし達の世界の人達も、何処でも争い事は絶えないんだねぇ」

 エリンの事を言っているのだなと、梓は理解した。
 最近、エリンの話題になると、寂しさを感じるのである。

梓「争い事は無くならないんじゃないでしょうか」

 なんとなく口からでた言葉だった。

唯「ほえ?」

梓「大切な人を思う気持ちがあるように、それだけ大切な物を手にしようとする人がいる」

梓「人の気持ちの分だけ、争う事があるんじゃないでしょうか?」

 喋りながら答えが出た感じだった。

唯「なるほど~」ウーン

 梓が言った事をじっくりと噛みしめる唯。

梓「だから」

 しかし、唸る唯より先に梓が言った。

梓「エリちゃんを必ず助けましょうねっ、先輩」

 顔を上げて、梓を見つめる唯。

唯「あぁぁあずにゃ~んっ!」ギュ

 唯に抱きしめられながら、梓は思った。

梓(本当は、唯先輩のためなんだけど・・・)


-- 律澪紬の寝室 --

律「ひゃ~、食った食ったっ」ポンポン

 叩いた腹を見てみると、ふっくらと確かに膨らんでいた。

澪「おいおい、いつの間に妊娠したんだ?」クスクス

律「な、なにお~!?澪のお腹見せてみろよーっ!」グイグイ

 澪の洋服をはだけさせようとする律。

紬(あら、あらららら!.....///)

澪「ちょっ、律!こら!やめ!おい!」

律「秘儀!服脱がせの呪文!」

 ババババ!

 律の常人とは思えない手さばきにより、澪は丸裸となった。
 これもレベルアップの賜物なのかと紬はしみじみ感動した。

紬(改めてみると、澪ちゃんの肌って綺麗だわね・・・)ポッ

 胸と股を隠し、恥らう澪を見て、紬もうずうずとせわしない。

澪「律!!ほんとに怒るからな!!.....///」

律「んー?澪ちゃんもお腹ぷっくらでちゅねー?」

 夕食をたらふく食べたので、澪のお腹もやはりふっくらと膨らんでいた。

澪「う.....///」

澪「わ、わかったよぅ!ごめん悪かったー、わたしも食べ過ぎたよーっ!」

律「分かればよろしー!ほれ!ムギサービスタイム終わりっ!」

 澪に服を投げ渡す。

紬「も、もう終わり!?もうちょっと~~」イヤイヤ

澪「む~ぎ~~!」

紬「あ、あはははは」


 澪が着替えて一段落つき、それぞれのベッドに横になっていた。

澪「しかし、変な呪文覚えるなよなー、律は」

律「エッヘェ、実はあれ呪文じゃないんだぞ?」

紬「てことは?」

律「手を高速に動かして、一瞬で脱がせたのだ!」エッヘン

澪「だから変なこと覚えるなって言ってるんだよっ!」チョップ

律「てへっ」

紬「フフ、でもそれだけりっちゃんのレベルが上がったって事なのかしら?」

澪「ムギも変におだてたらダメだぞ」キリ

律「なんだよー、現に澪もあたしも、皆だってレベルアップして強くなったろう?」

澪「そりゃあ、そうだけど・・・」

 レベルアップという単語を聞いて、
 本来の目的を思い出した澪は、下に俯いてしまった。

澪「・・・」

律「ん?」

澪「わたし達さ、倒せるのかな・・・」

 澪のトーンが下がり、ギクリとする一同。

紬「・・・」

 既に覚悟の上だった、それでも、
 当日を過ぎるまで、この不安は消えないだろう。

律「ライラックか・・・」

 倒す意外に道はないのか、いや、逃げるってのも手なのだろうか。
 しかし、それは選択肢には入れてやれない。

澪「わたし達こっちに来てまだ1ヶ月も経ってないんだぞ」

澪「ただの女子高生だったわたし達がさ、頑張ったところで、どうにかなるのかな、って・・・」

 澪の言うとおりだった。
 しかし、ふと疑問が沸いた紬は言う。

紬「そういえば、武器屋のご主人が言ってたわね」

紬「この町で唯一の、ランクDの討伐を成功させたギルドだって・・・」

 この町はお世辞にも大きいとは言いがたかった。
 しかし、自分達よりも屈強な人間は大勢いるように思えたのに、
 なのに、なぜこの町最強のギルドになったのだろうか。

律「そうだよなー・・・モンスター討伐ってあまり流行ってなかったとか?」

澪「そんな訳ないだろう・・・現にクリアして感謝された訳だし」

 自分達のお陰で討伐の依頼が無くなったと感謝された時を思い出した。
 つまり、この町にとって討伐は必須事項であったに違いない。

紬「じゃあ、やっぱり、私達が強いからかしら?」

律「それは・・・」

 それこそが謎だった。

律「どうなんだろうなー・・・?」

 一同は首を捻る。

澪「分からないな・・・明日マーサ」

 つい口走ってしまった。
 横目に紬を見ると、しまった、目が合ってしまった。
 
 しかし、紬はふっと口元を緩めて言う。

紬「いいのよ、澪ちゃん」

澪「あ、ごめん・・・」

紬「澪ちゃんが謝ることじゃないわよ、それに、私は大丈夫」フンス

律「お、ムギ、立ち直りが早いなー」

紬「人それぞれが過去への思い入れはあると思うわ」

紬「それはマーサさんの自由だと思うの、でも、ただ」

澪「うん」

紬「何が大切かって言うと、唯ちゃんが言ってくれたことなんだわ」

律「唯が・・・?なんだっけ?」テヘ

紬「唯ちゃん、こう言ってたでしょ?」

紬「エリちゃんを渡すのは間違っている、マーサさんは間違っているって」

律「そっか、そうだったな・・・」

澪「律はもう少し人の言う事聞こうな」

紬「フフ、だから、私は大丈夫よ?澪ちゃん」

 しっかりとした微笑を澪に見せる紬。

澪「うん、分かった。それでこそムギだよ」

 微笑返す澪。
 この世界に来て、力以上にレベルアップしたことはたくさなるんだなと実感した。

律「んじゃさ、明日村長のとこに聞きに言ってみないか?」

紬「それいいと思うわぁ」

澪「そうだな、村長が一番把握していると思うし」

律「うんじゃ、今日はもう寝よっぜ」ポンポン

 話している間も正直眠かった。
 なんせ限界にまで満杯だったから。

澪「だなー、もう寝ようか」

紬「でも・・・」

律「ん?」

紬「牛にならないかしら・・・心配だわぁ」

律澪「それは言うな」

 明日は良く動こうと思う。

theme : けいおん!!
genre : アニメ・コミック

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Secret

No title

今日、一気に1~22話まで読ませていただきました^^
じぶんはDQが好きなんでとても面白かったですよ~♪

No title

更新待ってます。

すみません、再開しました!

どうしようもないSSかもしれませんが、
最後まで書いてみようと思います。

何か残ればと思ってがんばります。
プロフィール

SS製作隊長

管理人:SS製作隊長

唯「ドラクエ!」シリーズ更新中!!

第一話スタートはコチラから
唯「ドラクエ!」第一話

問い合わせ先
ssmaketaityo@yahoo.co.jp
お気軽にご連絡ください。


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